
切らなくてもいい方法がある?
戦前までは、自宅にお産婆さん(助産師)を呼び、ハサミや糸を使わずにお産をするのが普通でした。お産婆さん(助産師)は会陰を保護する技術をもち、裂けないように保護してくれたそうです。つまり、ハサミや糸を使わなくてもお産はできる、ということなのです。
現在でも、助産院や助産師の介助によるお産においては、緊急時以外はハサミの使用などの医療行為は認められていません。助産師はオリーブオイルやラベンダーオイルなどを湿らせたガーゼで、会陰が伸びやすくなるようにケアしてくれます。
また、会陰の状態は分娩時の姿勢とも関係してきます。分娩台に寝る姿勢での分娩は、産道も横向きになり、会陰は下方向(肛門側)に強い負担がかかり、裂けやすくなるのです。一方で、産道が下向き姿勢でのフリースタイル分娩は、重力も手伝ってベビーも降りてきやすくなり、会陰はベビーの頭に押されて均等に広がります。
それでも自然裂傷は避けられない場合もあります。しかし、それは段階で例えると第1度裂傷(※1)程度のもの。例えれば唇がひび割れるのと同程度のもので、多少痛むことはありますが、治りも早く縫合の必要もありません。
しかし、会陰切開の場合は、第2度裂傷(※2)の段階までハサミを入れることになります。筋肉まで到達しているため、縫合が必要なのはもちろん、痛みが長引く可能性が高くなります。
※1 会陰の皮膚、粘膜など表面の裂傷。
※2 会陰の筋肉組織も裂傷。縫合の必要がある。
一般的なルーティン処置の流れ
「会陰切開」も含め、一般的な医療施設で行われるルーティン処置を、入院後のおおまかな流れとあわせてみていきましょう。
【入院後】
■分娩監視装置の装着
ベビーの心拍数などの状態を知るためにつけます。つけたままではなく、お産の進行具合に合わせて適宜装着する施設と、入院時から分娩終了まで継続的に装着する施設とあります。
■浣腸
便が産道の妨げとならないよう、事前に排泄させておくための処置。分娩中に便が出ないように、との配慮から発展したと考えられますが、科学的根拠はないようです。(※3)
【分娩台】
■血管確保のための点滴
お産の最中のトラブルに備え、血管を確保するために点滴の針を挿入・固定しておきます。手の甲や腕にするケースが多いようです。点滴の中身は、異常がない場合はブドウ糖などです。
■剃毛
感染の恐れを防ぐため、性毛の一部を剃ります。陣痛の合間に施すケースが多いようです。(※3)
■会陰切開
ベビーの頭が見え始めた発露期に施されます。陣痛の最中なので痛みはそれほど感じません。
【産後】
■会陰縫合
胎盤が出た後に麻酔をかけて縫合します。溶ける糸を使った場合は抜糸の必要はありませんが、抜糸をすることで違和感が軽減する場合も。その場合は、産後4~5日目に行う施設がほとんどです。
■子宮収縮剤の投与
子宮の収縮を促すため、点滴等で投与します。
※3 WHO(世界保健機関)は、「女性を出産マシーンのように扱うのではなく、人間的な出産を増やさなくてはならない」という、手術や投薬を最小限に抑えた自然なお産を推奨しています。その中には、「剃毛、浣腸は必要ない」という勧告も含まれています。近年ではこれらの医療行為を最低限にとどめる施設も増えてきました。日本でも平成17年18年の厚生労働研究で会陰切開に関するガイドラインが決まりました。「
医療情報サービス Minds(マインズ)」に掲載されています。
会陰切開をしたくない場合には、会陰を柔らかくするマッサージや体操をするなど、自分自身でケアすることも大切。まずは自分の意向をまとめ、施設側に伝えてみましょう。
【監修】
大葉ナナコ先生
バースコーディネーター 東京都青少年問題協議会委員
女子美術大学短期大学部生活デザイン科卒業。初産時から身体能力やセルフケア、精神保健に関心を持つ。カウンセリングやボディワーク、出産準備教育を学び、97年より出産準備クラスを開講。03年バースセンス研究所設立。05年日本誕生学協会を設立。子どもから大人まで、優しい誕生と出産の学びとセルフケア教育を普及する活動を、親たち・医師や助産師と展開中。21歳から7歳までの2男3女の母。「怖くない育児」、「えらぶお産」など著書・訳書多数。
2008/12/17更新